純粋理性批判 上巻 I・カント
宇都宮芳明 監訳 以文社 2004年
想像していた難易度ではなく
全然読みやすいのは訳者の功績だろうが
今も頻繁に名前をきくような哲学者の提示した考え方というのは
この18世紀のカントの哲学も同じく
あまりに今の我々の考え方、
思考の基礎、ベーシックとなっていることが多く
理解がしやすい
同時代の J・ロック の流れ、経験主義
(心は本来白紙で、経験が世界を表現し、その分知識を持つことになる)という考え方への異議、
知識は感覚、印象からは得られない「概念」を求める__
この点に回答、アプローチしたのが本書
ザックリと、上巻からの目次をかいつまむと
Ⅰ) 超越論的原理論
超越論的 感情論
・空間
・時間
超越論的 論理学
・超越論的 分析論
・超越論的 弁証論
(下巻)
・純粋理性の二律背反
・純粋理性の理想
Ⅱ)超越論的 方法論
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普段、大書を読まないせいで
序文>序論>Ⅰ〜Ⅶ
Ⅰ >第1部>序>第1節
Ⅱ >第2部>序論>第1部門>第1篇>序>第1章>第1節
という章節構造の把握(は今もしてないけど)に時間がかかる
中高で普通に習っているのかもしれないが
自分の記憶だと「部門」が出てくる
予備校の小論文の矢吹さんの授業、論文の構造自体の説明
整理された体系図をみたことがないような
要するに20年し、ようやく論文的論文を読むようになった
という...余りの読書量、簡単なものしか読めない貧弱な読書力、
ソリッドな書に向き合ってきてないこと...に打ちのめされる感あるが。
これは本書とは別の苦言。
インテリゲンチャ(intelligentsiya)らは学生時分からこの手の大書を
恒常的に読み続け年を重ねているワケで、
簡単な本しか読めない人、まして読書をしない人と
大章立てがされた本=1つの論(フレーム)を、どこまで厳密に分け、定義づけし
例外と丹念に検証された、経年で劣化しない精度で書かれた思考体系を
折に触れ読み続けている人とは
愕然とするほど、智、知、と考察、思索の技術に圧倒的な差があるといえ
書物はいずれ消失する、とか、日本人の近年の平均読書量の低下、みたいな話しは
90年代から云われ久しいが、そんな単純な話しでは済まされないというか
1つの物事への豊穣なアプローチや物の見方は、破壊的に質が低下したり
既に充分、貧しいことを意味しぐったりする位、落胆...
ウェブやSNSとか、質の低い情報に時間を割く結果になる、時間の浪費は
人生と知的で理性的な未来ごと搾取されている深刻な状況性を孕む訳で
モモの時間泥棒、程度で済まされないし、
これ以上考えても暗澹としてくるから、やめておこう。
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