MMJ、覚書き_①
現代貨幣理論(げんだいかへいりろん、英語: Modern Monetary Theory, Modern Money)
参考
世界の中ラボ(ちくま)
斎藤 美奈子
__から抜粋
財政赤字は心配無用、税は国の財源ではない
まず、L・ランダム・レイ『MMT現代貨幣理論入門』。翻訳が待たれていたMMTの基礎的な入門書である。500ページを超す大著だが、要点は序論で述べられている。
〈MMTが導き出す結論は、通俗観念に染まった多くの人々にとってショッキングなものである。最も重要なのは、MMTがオーソドックスな考え方に対して異議を唱えていることだ〉。
たとえば政府の財政赤字について。
〈MMTは、政府の財政は家計や企業のそれとはまったくの別物だと主張している。これは、ほとんどの人々にとって、身近で重要な信念に対する最大の異議申立である。我々は、「わが家の家計が連邦政府予算と同じような状態だったら、破産してしまう」「それゆえ、政府の赤字を抑制しなければならない」と常々聞かされているが、MMTはこのアナロジーは誤りであると主張する〉。〈政府が、自らの通貨について支払不能となることはあり得ない〉し、〈政府が支出するために租税収入を必要としないのは明らかである〉。なぜって通貨を発行するのは政府自身だから。現代の政府は中央銀行を有している。支払いのほとんどが電子化されて見えにくくなっているが〈200年前なら明白だった。国王が支出のために文字どおり硬貨を打ち抜き、その後、租税の支払いを自らの硬貨で受け取っていた〉のである。
政府の借金についてもしかり。〈政府による国債の売却は借入れとはまったく異なるものであると、MMTは位置づけている〉。国債の売却や買入れはすでに時代遅れだ。〈政府は支出のために自らの通貨を「借りる」必要がない!〉のである。
「えっ、ほんと?」ですよね。政府の財政が破綻する、国の借金を次代の子どもたちに回してはいけないと、私たちもまたさんざん脅されてきた。しかし、政府が自分で貨幣を造れるなら、たしかに借金や財政赤字を心配する必要はないことになる。
もうひとつ「えっ、ほんと?」なのは税に対するMMTの考え方だ。〈MMTは、租税制度の主な目的は通貨を「動かす」ことであると主張する〉。〈租税の本当の目的は、政府に支出の「財源」を供給することではない〉。人々が通貨を受け取る理由のひとつが〈その通貨で租税を支払わなければならないから〉だ。
〈なんだって? 君は、政府が支出をするのに租税収入は必要ないって言うのかい? そのとおりだよ、ワトソン君〉。なぜって短期間の例外を除けば〈我々の政府はいつも租税収入を上回る支出を行ってきたのだから〉。〈我々は「租税が政府支出を賄う」と考えることに慣れきっているため、これは衝撃的なものに感じられる〉が、通貨を発行しない地方政府や州などは別として,MMTは税の存在理由を〈貨幣に対する需要を創造する〉こと、あるいは〈総需要を減らすことだと認識している〉。税は、物価を調整するための手段であり、累進課税や所得税といった格差是正のための再分配の手段であり、喫煙やギャンブルなどの「悪」を抑制するためにかけるものだ、と。
政府の財政赤字を気にする必要はない。税金は政府にとっての財源ではない。狐につままれたような気がする半面、この考え方が新鮮に感じられるのは、「小さな政府」を標榜し、市場原理にすべてをゆだねる新自由主義経済とは反対の方向をMMTが目指していると見えるせいだろう。その発想は社会民主主義に近い。
・http://www.webchikuma.jp/articles/-/1860
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